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墓じまい後のご遺骨について。 様々な方法をケース別にご紹介します
近年、お墓を引き継ぐ人が見つからないために、墓じまいを検討する人が増えてきています。たしかに、墓じまいをすることでそれまで守ってきたお墓について一区切り整理をつけることができます。しかし、墓じまいをする際に、ご遺骨をどのようにすべきか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。今回は、墓じまいの際のご遺骨の取り扱いについてみていきます。
目次
ご遺骨を新しいお墓に移す場合
墓じまい後の選択肢としてよくみられるのが、新しく建てた別のお墓に移す、いわゆる改葬というものです。
改葬には決まった手順や手続きを踏む必要があります。
ここでは、改葬の際に踏むべき手順や手続き、そして改葬の際にご遺骨をまとめる際の方法についてみていきましょう。
改葬の手順
改葬の手順については端的に説明すれば、以下のような順序になります。
地区によって提出書類が異なることもあるので、各地区に合わせた書類の準備を心がけてください。
- 移動先を決めて移動先墓地の管理人に「受入証明書」を発行してもらう
(納骨時期を逆算してお墓建立の契約しておく) - 既存の墓地の管理人に「埋蔵証明証」を発行してもらう
- 既存の墓地のある地区の役所で「改葬許可証」の発行
(葬許可書発行手数料は1000円程度) - 役所に改葬許可申請書・埋葬証明書・受入証明書などを提出
- お骨取り出し⇨移動・納骨
手順にはないですが、親族や寺院や霊園への相談も大切です。
特に、親族への相談は前もってきちんとやっておかなければ、あとあとトラブルのもとになります。
改葬の目的や理由、お墓の移転などに必要な費用の分担などを相談するようにしましょう。
そして、それまでお墓を管理してくれた寺院や霊園への相談も綿密かつ慎重に行いましょう。
というのも、改葬は寺院や霊園にとってあまりうれしい話ではありません。むしろ檀家や顧客が減る、マイナス要素の話と考えられるからです。
このため、向こうの気持ちを汲み取りつつ、穏やかに話を進めるようにしましょう。
ご遺骨をまとめる場合
改葬の際に、納骨してあった故人のご遺骨が多く、移転先のお墓に入りきらないというケースも少なくありません。
このような場合は一体どうしたらよいのでしょうか?
この場合はご遺骨をまとめるという選択肢がとられますが、そのための方法は2つ挙げられます。
1つめは、骨壺を納めるカロートの土に直接接している部分に、ある程度古くなった(三十三周忌や五十周忌)ご遺骨を取り出して広げるというものです。
こうすることにより、お墓の土という自然の中に還すことができます。
もう1つの方法は、古くなったご遺骨を1つの骨壺にまとめて納めるという方法です。
この方法は、上記の方法をとろうにもカロートに土の部分が全くないという場合に使うことができます。
この方法をとる場合、取り出したご遺骨を骨壺に入れる前に粉骨すれば、それだけ多くのご遺骨をまとめて納めることが可能です。
いずれの方法を用いても納骨に必要な骨壺が減る分、カロートのスペースにも余裕が出てくるため、将来的に新しく納骨することになってもスペースの心配がなく安心することができます。
墓じまい後にご遺骨を管理できない場合
墓じまいをする際にご遺骨を管理することができないというケースもあります。
ここでは、そのような場合にどのような方法があり、それぞれどのようなメリットやデメリットがあるかをみていきます。
どれも一長一短があるので、どの方法が最も故人が喜びそうか、また遺族にとって適したものかをよく吟味することが大切です。
永代供養する
ご遺骨を管理できない場合によくとられる方法の1つが永代供養です。
永代供養とは、お墓の管理者がお墓の管理だけでなく供養までを一括してまかせられる方式の供養のことで、近年お墓の供養ができない人が増えている状況を受けて利用者が増えています。
このため、供養や管理に関しては料金さえ払っていれば、あとは定期的にお参りするだと手間がほとんどかかりません。
なお、「永代」という言葉から、未来永劫にわたって故人のお墓の管理や供養をやってもらえると誤解する人も多いのですが、ここでいう「永代」とはあくまでもある程度の一定期間(三十三回忌や五十回忌までなど)であるため、契約の際は契約内容をよくチェックしておくようにしましょう。
また、管理者が倒産した場合は、契約の途中でも永代供養が打ち切りになるので注意が必要です。
さて、永代供養ではご遺骨は合祀墓(永代供養墓)や、個人墓もしくは納骨堂に納められます。
どのタイプの納骨をされるかによっても料金が大きく異なってきますので、その点はあらかじめ留意しておきましょう。
そして、合祀墓に納骨された場合は、途中で取り出すことができませんので、それについても注意が必要です。
手元供養する
いっそのこと、自宅で個人のご遺骨を供養する、手元供養という方法をとる人もいます。
具体的には、ミニ骨壺などにご遺骨を入れて毎日のように管理・供養するというものです。
故人を身近に感じつつ毎日を過ごしたいという人にとってはこの方法が合っているといえます。
ただし、永代供養に比べると自分たちでいろいろと供養しなければいけない要素が強いため、そういうことにまめな人に向いているといえます。
散骨する
近年では、葬儀の方法も多様化しているため、散骨という方法でご遺骨を処理するという人も増えています。
散骨で特に多いパターンが、海に還す海洋散骨や、山奥で散骨する山岳散骨です。
故人が自然に還したいという遺志があった場合や、これ以上お墓の管理が難しいという場合にとることのできる方法といえます。
ただし、散骨を行うには、散骨する場所の管理者や利用者などに対する配慮が必要です。
例えば、海洋散骨を行う場合は海水浴場の近くや漁場などで行うと、そこの利用者と民事上のトラブルになりかねませんので、トラブルが起こりそうになり海域で散骨することが大切です。
さらに、散骨に先立って粉骨という処理が必要です。
粉骨とは、ご遺骨を2㎜以下の大きさにまで細かくすることです。
そして、散骨のしかたによっては天候などに左右される場合もあるので、あらかじめ理解しておくようにしましょう。
樹木葬にする
ご遺骨を自然に還す、樹木葬も近年注目されている方法です。
これは、墓石代わりに樹木(低木)を植えて、そのたもとにご遺骨を埋葬するというものです。
墓地に専用の区画を設けて、そこで樹木葬をするパターンが多く、個人用のスペースから家族用のスペースまでいろいろ用意されているため、納骨し直す骨壺の数に合わせて選ぶことができます。
自然に還すという方法の1つであるうえ、里山保全にも一役買う方法であるため、環境意識の強い人に特に向いているといえます。
ですが、地方の山奥での樹木葬は、アクセスなどの問題も発生することがありますので、場所の選定で悩む場合があるということも留意しておいてください。
きちんと墓じまいをしないとご遺骨はどうなる?
もしも、お墓の跡継ぎがいなくて墓じまいそのものができない場合、そのお墓や中に納められているご遺骨はどうなるのでしょうか?
この場合、その墓のある墓地の管理者(寺院や霊園)は法律(墓埋法=墓地、埋葬等に関する法律)に基づいて1年の期限で縁故者を探すことになります。
具体的には、役所の出す官報や墓地の中に立てる立札にお墓に眠る故人の縁故者を探している旨を記載します。
もし、この周知にもかかわらず縁故者が見つからないまま1年が経った場合は、そのお墓に眠る故人は無縁仏として扱われます。
そして、ご遺骨がとりだされた後で、無縁仏供養塔に合祀され、お墓も撤去されます。
なお、一度合祀された無縁仏のご遺骨は取り出すことはできません。
無縁仏にしないためには、改葬をして、永代供養にするのがおすすめです。
まとめ
今回の記事の内容をまとめると、以下のようになります。
- 改葬する場合、移転元のお墓の管理者から埋葬証明書を、移転先のお墓の管理者から受入証明書を発行してもらい、それに改葬許可証申請書を添えて役所に提出する。数日後に発行される改葬許可証を入手して、初めて改葬ができる
- 墓じまいの後でご遺骨を管理できない場合は、永代供養や散骨などの方法がある。いずれも一長一短があるため、どの方法が最も故人が喜びそうか、またご遺族にとって適したものかをよく吟味することが大切
- 墓じまいすらできない場合は、そのお墓のある墓地の管理者が法律に基づいて、1年間縁故者を探すことになる。1年経っても縁故者が見つからない場合、ご遺骨は無縁仏として合祀され、お墓も撤去される
このように墓じまいを行った後のご遺骨の取り扱いについてはさまざまですが、どの方法が適切であるかは遺族によりけりです。
そのため、墓じまいを検討する段階で親族同士やお墓を管理する寺院・霊園と綿密に相談や検討をすることが大切です。